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にせんどうか
二銭銅貨
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1923(大正12)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,143 字 · 34 页
幸なことには、この支配人は、新聞記者操縦法がうまいことを、一つの自慢にしている男であった。のみならず、新聞記者を相手に、法螺を吹いたり、自分の話が何々氏談などとして、新聞に載せられたりすることは、大人気ないとは思いながら、誰しも悪い気持はしないものである。社会部記者と称する男は、寧ろ快く支配人の部屋へ請じられた。
大きな鼈甲縁の眼鏡をかけ、美しい口髭をはやし、気の利いた黒のモーニングに、流行の折鞄という扮装のその男は、如何にも物慣れた調子で、支配人の前の椅子に腰を下した。そしてシガレット・ケースから、高価な埃及の紙巻煙草を取出して、卓上の灰皿に添えられた燐寸を手際よく擦ると、青味がかった煙を、支配人の鼻先へフッと吹出した。
「貴下の職工待遇問題に関する御意見を」
とか、何とか、新聞記者特有の、相手を呑んでかかった様な、それでいて、どこか無邪気な、人懐っこい調子で、その男はこう切出した。
そこで支配人は、労働問題について、多分は労資協調、温情主義という様なことを、大いに論じた訳であるが、それはこの話に関係がないから略するとして、約三十分ばかり支配人の室に居った所の、その新聞記者が、支配人が一席弁じ終ったところで「一寸失敬」