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ごえもんとしんざ
五右衛門と新左
国枝 史郎
「大衆文芸 第一巻第一号」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,405 字 · 21 页
)
立合抜打と称された「抜刀術」も必要であった。
「小具足腰の廻わり」も必要であり「捕手」「柔術」も大切であった。「強法術」は更に大事、「手裏剣」の術も要ありとされた。
「八方分身須臾転化」これが忍術家の標語であった。「居附」ということを酷く嫌った。
「欲在前忽然而在後」これでなければならなかった。
「澄む月は一つなれども更科や田毎の月は見る人のまま」
こうでなければならないのであった。
六
或る夜秀吉はお伽衆を集め、天狗俳諧をやっていた。
刀売おどろいて見し刄傷沙汰
木魚打つ南無阿弥陀仏新左殿
南無三宝夜はふけまさる浪士なり
京つくし野を馬曳きて吠える犬
天が下はるばるかかる鯨売
蚊遣立って静かに伝ふ闇夜かな
蚊柱の物狂ふなり伏見城
京伏見経机ありあはれなり
辻斬の細きもとでや念仏僧
鬼瓦長し短し具足櫃
忍術の袈裟かぶり行くほととぎす
こんな名吟が続出した。
で、みんなドッと笑い、ひどく陽気で可い気持であった。
で、秀吉が不図見ると、細川幽斎と新左衛門との間に、見慣れない人間が坐わっていた。
黒小袖を着、黒頭巾を冠り、伊賀袴を穿き、草鞋ををつけた、身真黒の人間であった。