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ごえもんとしんざ

五右衛門と新左

国枝 史郎

「大衆文芸 第一巻第一号」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,405 字 · 21 页

青空文庫

頓智のコツとそっくりだ。……頓智とは弱点を突くことさ。用心堅固の奴に限って沢山弱点を持っている。その弱点をギシと握り、チョイチョイ周囲をつっ突くのさ。……まともに突くと皮肉になる。皮肉になると叱られる。そこで軽くつっ突くのさ。……そうだ或る時こんなことがあった。『余の顔は猿に似ているそうだ。どうだ、ほんとかな、似ているかな?』こんなことを殿下が仰せられた。列座の面々一言も無い。こいつァ何うにも答えられない筈さ。事実猿には似ているのだが、相手が殿下だ、そうは云えない。で、いつ迄も無言の行よ。そこで俺が云ったものさ。『いえいえ然うではございません。つまり猿の顔なるものが、殿下に似ているのでございます』とな。すると大将大喜びだ。早速拝領と来たものさ。アッハハハこの呼吸だよ」

「いや面白い、そうなくてはならない」五右衛門は感心したらしい。

釜の湯がシンシンと音を立てた。

早咲の桜がサラサラと散った。

どこかで鶯の声がした。

将に閑室余暇ありであった。

×

「お前は飛行出来るかな?」

或る時秀吉が五右衛門に訊いた。

「自由自在でございます」

これが五右衛門の返辞であった。