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ごがつのそら

五月の空

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,361 字 · 12 页

青空文庫

雀は勿論 彼等は電車より厭な声を出す。

濁り、限られ、さも苦しそうに

あとから あとから

ケッケッケッケッ、コキーケッケッ

と叫ぶのだ。

風が吹くのに

空は碧いのに

あの声ばかりは 繩で縛られ身を※(「足+宛」、第3水準1-92-36)くようだ。

新らしい卵を産んだと云うのに

朗らかな歌も歌えない鳥類――

若しや――人間に飼われ 飛ぶ空もなく

卵はあとから盗まれるので

彼那 不快な心になったのか?

若しそうならば――……

ああ、あわれ あわれ

彼等は 野禽の昔さえ

憶い出さないか?

*

大空は からりと 透きとおり

風がそよぎ

薔薇は咲き匂う

今はよい 五月だ。

されど、又来る冬を思うと

私の心は、悲しくなる

子供に、夕方が来るように。

あの 寒さ

憐れな木の家の中で 凍る頭や指先

丸くちぢまり 呼もせず

すくんで暮す 朝夕を思うと

出来るなら 黄金の 壺に

此 初夏の輝きを 貯えたく思う。

胸に抱けば 暖かろう

蓋をすかし そっと覗けば 眼も耀こう

愉しい 我心の歓びが還り

愛が とけ

恐ろしい横眼が

真直な 正視に 微笑もう。

何処かに

此 赫きと色とを

掬いとる 小籠はないか

賢い ハンス・アンデルセン

ノーウェーで、