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ごかいのまど

五階の窓

国枝 史郎

05 合作の五

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,651 字 · 16 页

青空文庫

17

17

「おやっ!」

と叫んだ長谷川の声がひどく間が抜けて大きかったので、山本は危なくコーヒー茶碗をテーブルの上へ落とそうとした。

「おい、いったいどうしたんだい、大声が自慢にゃあならないぜ」

「シェーネス・フロイラインが通るのだよ」

長谷川は窓へ飛んでいった。

「どれ」

と言うと、山本も長谷川の肩越しに窓外を見た。

雪が止んだので人通りがある。

一人の娘が歩いていく。深くうつむいているとみえ、ショールを抜いて頸脚が、少し寒そうに白々と見える。それが瀬川艶子であった。やがて人影に隠れてしまった。

「わが少女去りにけりか」

長谷川はテーブルへ帰ってきた。

「それだけの詠嘆でいいのかい」

椅子へ腰かけた山本は、ちょっと皮肉に言ったものである。

「探偵小説家としてはいけないさ。だが、ぼくは場合によっては探偵小説家なんか廃業したっていいよ、彼女さえぼくを愛してくれたらね」

「不心得だね、食えないぜ」

「なに、そうしたら新聞記者になる」

「ぼくのお株を奪うのだね」

「あっ、なるほど、そういうことになるか」

「探偵小説家でいたまえよ」

「探偵小説家でいる以上は、詠嘆ばかりしてはいられないね。