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いぶせますじによせて
井伏鱒二によせて
小山 清
「新潮 第五十巻四号」新潮社、1953(昭和28)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,419 字 · 11 页
また、その記事が極く小さい字で最近の新聞に出ていたようにも思われて来たのである。」
これは作者がその心のくらさを追求した文章である。夢は五臓の疲れというが、おそらく読者もそういう夢を見たことがあるだろうが、そういう夢にこの作品が酷似していることに気がつくだろう。そしてその夢の中には、夜ふけの空に高く、幻のように白く梅の花が咲いてゆれているのである。「ああ寒いほど独りぼっちだ!」という山椒魚のすすり泣きも、「ああはや、私らはどのようにもギンナガシだります」という「シグレ島叙景」の伊作の嘆息も、また、「サワンよ、月明の空を、高く楽しく飛べよ。」という「屋根の上のサワン」の中にある憧憬の言葉も、みなひとしくこの作者の思いぞ屈した心から吐露されたものである。
井伏さんの最近の作品に「晩春の旅」というのがある。九州旅行の往きの汽車中の出来事と、帰途、山口県の青海島を発動船で回航したときのことを書いたものである。この作品には、かつて牧野信一から譲られたという花梨のステッキが、かなりの役目をつとめている。井伏さんは牧野信一とつまらないことから気拙くなり、そのうち牧野さんは小田原の生家で自殺を遂げてしまう。