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きょうのそのころ
京のその頃
上村 松園
「塔影」1935(昭和10)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,450 字 · 7 页
そうした町中や店先に見る女の風などにしても、その頃はまだどっちかと言えば徳川時代の面影を半ばは残して、一入懐かしいものがあった。
この間帝展に出品した「母子」は、その頃への私の思い出を描いたものだが、いわば私一人の胸の奥に残されてる懐かしい思い出なのだから、ああしたものも私だけが描くことを許された世界のような気がする。私はまだまだいろいろ沢山描きたいものを持ってるので、これから機会あるごとにああした思い出を描き残して置きたいと思う。年を追って順次新しい時代に及ぼしてみたいと思ってる。
この頃ではお嫁さんだか娘さんだか、髪形や帯着物などでは一向判断のつきかねる風俗になってしまってるが、その頃はお嫁さんはお嫁さん娘さんは娘さんと、ちゃんと区別がつき、女中は島田に黒襦子の帯を立子に結ぶ、という風にきちんときまったものだったし、同じお嫁さんの風にしても、花嫁中嫁とおんばちでは、髷にしても鹿の子の色にしても※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)物にしても何段にも何段にも区別があった。
総じて京風というと襟足の美しさが一際目立つもので、生え際の長い、白い頸筋に黒々とした髪の風情は、特に美しい人のためにこそ引き立ちもし、生えさがりの短い人など却って晴れがましい程だ。