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きょうかのこむすめどうじょうじ
京鹿子娘道成寺
酒井 嘉七
「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页
これは名高い安珍清姫の伝説が脚色されたものである。延長六年八月の頃、奥州に住む、安珍という年若い美僧が、熊野詣でに出足した。その途中、牟婁郡で、まさごの庄司清次という男の家に、一夜の宿をもとめた。ところが、その家の娘に、清姫という女があって、安珍に懸想した。……胸の内を、うちあけられた、この若い美僧は、帰途には、再び、立ちよる、その節まで……と約して、熊野詣での旅をつづけた。
安珍は、宮詣でを終えて、帰途についた。しかし、彼を思い焦れている清姫のもとへは立ちよらなかった。女は、これを知って、男を怨みに恨んだ。女の一念は、自分の姿を大蛇に化した。そして、無情の男を追った。安珍は逃げ場に窮して、日高郡にある道成寺にのがれ、救いをもとめた。寺僧は彼の請をいれた。ただちに、僧を衆めて、大鐘を下し、その内に、安珍を納した。
やがて、清姫の怨の権化――大蛇の姿が現われた。大蛇は、鐘を静かに蟠囲した。尾を挙げては、鐘を敲いた。その度に火炎が物凄く散った。時が経った。大蛇は去った。生きた心地もなく、物蔭から、様子をうかがっていた僧たちは、ほっと、大きな息をつくと急いで、鐘を起した。