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きょうかのこむすめどうじょうじ
京鹿子娘道成寺
酒井 嘉七
「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页
と、こんなことを申されたのでございました。そして、弟子が、舞台でしくじったと云っては、さながら、お芝居を地で行く様な、せめ折檻は常のこと、飼い猫が自分の衣裳を踏んだといっては、しっぽを手に取って、振りまわし、はては見ている者が、思わず、目をおおう様な行いが度々あること。さては、一度も、初日の幕あき前に――これは、ある田舎を廻っていらっした時のことだそうでございますが、裏庭を通って、あげ幕への道すがら、小屋の庭に、はなし飼いにしてございました小猿が、自分の顔を見て、きゃっと、飛びのき白い歯をむき出したとかで、庭さきに置かれてある駒下駄を取りあげると、はっし、とばかり、その小猿の頭に投げつけ可愛そうにも、殺してしまったという様な話さえあるのでございました。お師匠は、この話の後に、言葉をおつぎになりまして、
「あの小猿は、ほんに、可愛そうでございました。親猿が、その有様を見ておりまして、さも悲しげな声で、なきさけび、半四郎師匠を、きっと、にらみつけた、あの凄い目に、傍にいた私どもは、思わず、震い上ったほどでございました。その芝居小屋は、その後、はやらなくなりまして、なくなりました。