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きょうかのこむすめどうじょうじ

京鹿子娘道成寺

酒井 嘉七

「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页

青空文庫

あの猿がうらんでいるのかも知れませぬが、座主も、座主でございます。ああした小屋も、もとより水商売、そうしますれば、お茶屋や、料理やで、お猿は、去るに通じると云いまして、げんを祝い、お稽古ごとにも「外記猿」とか「うつぼ猿」さては、俗に「猿舞」と申します「三升猿曲舞」というように、猿のついたものは、習わないほどでございますのに、あの小屋の座主はまた、何と考えて、ああしたお猿を、小屋の庭先きに飼っていらっしたのか、と今でも不審に思うのでございます」

と、こんなことを申されたことがございました。私は、このようなとき、

「そうしたお方の三味線をお弾きになるのはいやなことでございましょう。しかし、それにいたしましても、心の中で、お師匠さんが、そんなに思っていらっしゃいますのに、どうして、踊と三味線があのように、よく合うので御座いましょう。どちらかで、気が合わない、と思っていれば、自然と、ああした場合にも、それが現われ、うまく、調子が合わないのでございますまいか」

と、私が、こんなに、申しますと、師匠は頭をお振りになりまして、

「いや、そんなことはございません。私は人間としてのあの人には、嫌悪を感じるのみでございますが、踊り手としての半四郎には、心の奥から頭を下げております。