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じんぞうにんげんのひみつ

人造人間の秘密

海野 十三

「小学六年生」1940(昭和15)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,664 字 · 38 页

青空文庫

そのときは、空はまっくらであったが、銃声と反対の方へ逃げだして、五分ぐらいたって、後をふりかえると、私たちのすんでいた町は、三ヶ所からはげしい火の手が起っていた。

砲声は、しきりに、夜の天地をふるわせている。気がつくと、頭上を、曳光弾が、ひゅーンと、気味のわるい音をたてながら、通り越して行く。しかもこれから私が逃げようという方角へ、その曳光弾はとんでいきつつあることを知ると、さすがの私も、足がすくんでしまうように感じた。

「これは、いけない。ぐずぐずしていると、ドイツ兵にみつかってしまうぞ」

日本人である私が、ドイツ兵に見つかっても、友邦のよしみをもって、大したことがないらしくおもわれるであろうが、今の私の場合は、そうはいかなかった。というのは、当時私たち日本人は、ことごとく、ベルギー国から引揚げてしまったことになっていたのだ。私は、或る事情のため、極秘にこの土地にのこっていたのだ。だから、もしドイツ兵に見つかれば、有無をいわさず、敵性ある市民、あるいはスパイとして殺されてしまうであろう。殊にモール博士から託されたこの黒い筒などをもっていることなどが発見されれば、さらにいいことはない。