轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にんげんいす

人間椅子

江戸川 乱歩

「苦楽」プラトン社、1925(大正14)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,920 字 · 30 页

青空文庫

私はシャツ一枚になると、底に仕掛けた出入口の蓋を開けて、椅子の中へ、すっぽりと、もぐりこみました。それは、実に変てこな気持でございました。まっ暗な、息苦しい、まるで墓場の中へ這入った様な、不思議な感じが致します。考えて見れば、墓場に相違ありません。私は、椅子の中へ這入ると同時に、丁度、隠れ簑でも着た様に、この人間世界から、消滅して了う訳ですから。

間もなく、商会から使のものが、四脚の肘掛椅子を受取る為に、大きな荷車を持って、やって参りました。私の内弟子が(私はその男と、たった二人暮しだったのです)何も知らないで、使のものと応待して居ります。車に積み込む時、一人の人夫が「こいつは馬鹿に重いぞ」と怒鳴りましたので、椅子の中の私は、思わずハッとしましたが、一体、肘掛椅子そのものが、非常に重いのですから、別段あやしまれることもなく、やがて、ガタガタという、荷車の振動が、私の身体にまで、一種異様の感触を伝えて参りました。

非常に心配しましたけれど、結局、何事もなく、その日の午後には、もう私の這入った肘掛椅子は、ホテルの一室に、どっかりと、据えられて居りました。