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にんげんかい
人間灰
海野 十三
「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,345 字 · 33 页
(五)湖尻に上ったのが十時半ごろだった。空気工場の横を通ったがなんだか辺に白いものが見えるので、懐中電灯で照らしてみると、構内に気球が三個、巨体を地上の杭に結びつけられて、風にゆらゆら動いていたこと、工場の中窓には灯がついていないようだった。
(六)それから工場を後にし、大西ヶ原を横断して、庄内村の家つづきまで来たところで、駐在所の巡査に捕えられたこと。
「……なるほど、こいつは面白い」
と署長は一人で悦に入っていた。
「なにが面白いものか」
と署長の頭の上で、頓狂な声がした。駭いて署長がうしろを向くと、そこには彼と犬猿の間にあるK新報社長の田熊氏が嘲笑っていた。彼は署長の手帖の中身をスッカリ藁半紙に書き写してしまってから、激しい地声でまくし立てた。
「手帖を展げるなら、こんなくだらんことを見せるのは止して、犯人の名を書いてあるところでも見せたがいいよ」
「オイ貴様、盗人みたいなやつだナ。そんな暇があるなら職務執行妨害罪というのを研究しておけよ」
田熊は咳払いと共に向うへスタスタ歩いていった。
「どうも彼奴は苦が手だ。……そこで今のうちに……」
と署長は、周到に手帖を畳んで冥想していると、そこへ庄内村の巡査が入って来て彼の机の前で挙手の敬礼をした。