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にんげんかい

人間灰

海野 十三

「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,345 字 · 33 页

青空文庫

「ホホウ、そうか」と署長はまた鉛筆を嘗めた。「その次は……」

「もうそれきりです」

「うん、これは御苦労だった。では適宜に引取ってよろしい」

巡査は署長の方へ向いてペコンとお辞儀した後、側を向いてもう一つお辞儀をし、廻れ右をして帰っていった。

「さあ、これだけ材料が揃えば、まずわしの面目も立つというものだ」

と署長は呟いた。途端にその背後で例のエヘンという咳払いが聞えたので、署長は急に苦が虫を噛みつぶしたような顔になった。

「なんじゃ、これは一体」

とベタ一面に鉛筆を走らせた藁半紙を署長の鼻先につきつけたのは、もう夙くに帰ったものとばかり思っていたK新報社長の田熊だった。

「こんなまどろこしいことはやめろ。これでは殺人事件は何年たっても解けないぞ。号外だって之までに六遍も出しそこなった。犯人の血まみれ男はどうしたのだ。あいつをここへ引擦り出し給え。一体あの怪漢を、こんどは厳重に囲って見せぬようだが、あれは一体何者だ。とにかくこの次来たときにも、手帖と睨めくらでは、いよいよ新聞で書きたてるぞ、いいか」

田熊は云うだけのことを云うと、またスタスタと向うへ行った。