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にんげんかい

人間灰

海野 十三

「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,345 字 · 33 页

青空文庫

ごらんなさい。これは林檎です。これを入れてみましょう」

技師は赤い林檎を箸の先に突きさして、液体空気の中にズブリと漬けた。ミシミシという音がして、液体空気が奔騰した。その後で箸を持ち上げると、真赤な林檎が洋盃の底から現れたが、空中に出すと忽ち湿気を吸って、表面が真白な氷で蔽われた。

「さあこの冷え切った林檎は、相当堅くなりましたよ。小さい釘ぐらいなら、この林檎を金槌の代りにして、木の中に打ちこめますよ」

技師は小さな釘をみつけて、台の上につきさすと、その頭を凍った林檎で槌がわりにコンコンと叩いた。釘は案にたがわず、打たれるたびに台の中へめりこんでいった。見物の一同は、唖然とした。

「さあそこで、こんな堅い林檎ですが、これが如何に脆いかお目にかけましょう。ここにハンマーがあります。これで強く殴ってみましょう」

そういって技師はハンマーをとると、台上の冷凍林檎を睨んだ。

「エエイッ」

ポカーンと音がして、ハンマーは見事に林檎を打ち砕いた。あーら不思議、林檎はグチャリとなるかと思いの外、一陣の赤白い霧となって四方に飛び散り跡片もなくなった!

6

「林檎が消え失せた!」