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にんげんかい

人間灰

海野 十三

「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,345 字 · 33 页

青空文庫

「あなたがた注意をして下さい。その大きな机の後方へ出てくると、生命がありませんよ」

「ナニ、生命がないとは……」

恐いもの見たさに、一同は首を伸べて、大机の後方を覗きこんだ。

「いま明けてみますから……」

青谷技師は側らの鉄棒をとって、床の一部を圧した。すると板がクルリと開いて、床の下が見えてきた。床下には普通の洋風浴槽の二倍くらい大きい水槽が現れた。その中を見た一同は、思わず呀ッといって顔を背けた。その水槽からは湯気のようなものが濛々と立ちのぼり、その下には青い液体が湛えられ、その中に一個の人体が沈んでいるのが認められた。引き上げてみると、それは外ならぬ赤沢博士の屍体だった。全身は真白に氷結し、まるで石膏像のようであったが、その顔には恐怖の色がアリアリと見えていた。――青谷技師は、このハンドルを廻さなければ液体空気はなおドンドンこの水槽の中へ入って行く筈だと説明した。

「これは面白いことになってきた」K新報社長は喚きたてた。「これはテッキリ赤沢金弥が犯人じゃろうと思っていたが、赤沢は幽霊に殺されてしまったじゃないか。オイ丘署長、犯人は一体誰に決めるのだ」