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にんげんかい

人間灰

海野 十三

「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,345 字 · 33 页

青空文庫

この話の方が青谷君の腑に落ちるでしょうから」

「君は誰です?」

「私ですか。人間灰が湖上へ降り注いでいる真下を舟で渡った男です。やがて帽子から顔から肩先から、融けた血で血達磨のようになった男です。なるほどこの肉も血も、珠江夫人のではなかった。貴下の言うとおりにネ。血型O型の人肉は誰だったのでしょう。それは貴下の家から程近い墓場の下に睡っていた女のものでした。峰雪乃――ご存知ですか、この名前を。たった今、その土饅頭を崩して棺桶の中を開いて来ましたが、中は全く空っぽです。貴下はあの晩、一度工場の門を出て墓場へゆき、闇に紛れてこの仏を掘りだし、工場へ引返したのです。そして人肉散華をやりました。墓の方は時間が無かったために、壊した土饅頭を作り直す暇がなく、上に土だけ被せておいたところを、はからずも通りかかった一人の男が見ました。つまりこの僕がネ」

髭男はニヤリと笑った。

「全くお気の毒でしたネ。人肉散華から再び帰って、貴下は土饅頭を作り、トラックの跡を消したが、それはもう遅すぎました。なぜこんなことをやったか。貴下はその夜かねての手筈で夫人に姿を隠させて、丁度夫人が失踪したようにみせたのです。