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にんげんはんえい

人間繁栄

豊島 与志雄

「改造」1924(大正13)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,038 字 · 38 页

青空文庫

彼は急に心の落付きを失って、それから慌しく外出した。

「何ということだろう、俺達は、揃いも揃って子供ばかりほしがってる。これで八重子が妊娠したら、それこそ万々歳だ。」

変に擽ったいものが腹の底からこみ上げてきて、彼は往来の真中で身体を揺った。

その日彼は自動車を駆って、お常の家へ不意に昼飯を食いに行った。子供四人共丈夫だった。晩飯はお千代の家へ食いに行った。お千代は大きな臨月の腹をもてあつかって、肩でせいせい息をしていた。

「いつ生れるんだい。」

「もうじきだそうですけれど……。こんどのは大変発育がいいって、お産婆さんもそう云っていますが、何だかいつもよりお腹が大きくて苦しいんですの。」

「二子じゃないのかね。」

「あら、いくら大きいったって……。」

糸切歯のあたりの金をぴかっとさして笑ったが、その拍子に、眼の縁の薄黒い隈取りが赤くなった。

餉台のまわりには子供達が、燕の子のように口を並べて、彼がはさんでくれる刺身の切を待っていた。彼が少し悪戯をしだすと、それに皆元気を得て、彼の頭の毛を掴んだり肩に上ったりした。それを彼は順々に並ばして、名前を呼んで返事をさした。