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にんげんはんえい

人間繁栄

豊島 与志雄

「改造」1924(大正13)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,038 字 · 38 页

青空文庫

あんまり人を踏みつけになすっていらっしゃるから……。」

「え、とんでもないことを云っちゃいかんよ。俺がお前を踏みつけにしてるなんて、馬鹿な。だからすっかり云ってごらんと云うのに。俺に悪いことがあれば何でも改める。え、何のことなんだい、お前が云ってるのは。子供が出来たら云うなんて、そんな待遠いことをしないで、今すぐに云ったらいいじゃないか。」

「だからあなたには何にも分らないんです。」

ぷつりと云い切って、彼女は眉根をぴくぴくさした。それは気持の険悪な証拠だった。この上云い争えばヒステリーを起すかも知れない、と洋造は思って、その問題には触れないことにした。

「では、皆の顔合せの会合は、お前の気持がよくなるまで延しといてもいい。」と彼は云った。

それでも、折角思い立ったことを中途で止すのは、如何にも残念だった。四十になってこれから老衰期にはいるとか、いつ病気で頓死しないとも限らないとか、そんなことは妻に対する単なる言葉の調子で、実際の感じとは縁遠いものであったけれど、十三人の子供を一堂に会合させるということが、この上もなく痛快に思えるのだった。

その痛快だという気持は、二十五六年前まで遡る。