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がんりゅうじま

仇討二十一話

直木 三十五

直木三十五『仇討二十一話』。同一底本的分册已合并为一书。收入:巌流島、相馬の仇討、傾城買虎之巻。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,854 字 · 35 页

青空文庫

従って、たかは父に似たか母に似たかは知れぬがいい女である。

「二人のいい所だけを取るともっといい女だったのに」

と、通仙、藪医だからメンデリズムの法則なんか知らなかったのだろう。子供という者は母に似るか父に似るか、祖父母に似るかで、母のいい所と父のいい所だけをとったり、二人の悪い所だけに似たりして生れるもので無い。母親が小ぢんまりとした細面(ほそおもて)の美人で、父親が眉の太い、大きい鼻だと、きまって親爺に似て出来てくるものである。

たかが十二三の時分から、そろそろ近所で噂が高くなった。

「医者坊主の娘にしておくのは勿体(もったい)ないな。鹿の角細工店でも出して看板娘にすると、よう儲かるで」

と、諸国遊覧客の懐を相手に暮している奈良町人碌な事を云わない。

奈良町奉行の与力、玉井与一右衛門の若党の源八というのが、このたかに惚込んだ。通仙の下男に頼んでは艶書を送る。下男の方では、

「旦那又参りました」

と、庭にでも落ちていたような顔をして、忠実そうに通仙に手渡す。

「うるさい奴じや」

と気にもとめない。源八その内にそれと知って、一日酒の勢をかりて、通仙に申込むと頭ごなしに叱られてしまった。