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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

こう思えば思われる。

これが二人を怯かしたのである。

「主税様階下へ降りましょう。……もう妾はこんな所には……こんな恐ろしい所には! ……それよりいっそ階下へ降りて、頼母たちと斬り合って、敵わぬまでも一太刀怨み、その上で死にましょう!」

あやめは前歯を鳴らしながら云った。

「うむ」と主税も呻くように云った。

「亡魂などにたぶらかされ、うろついて生恥さらすより、斬り死にしましょう、斬り死にしましょう」

階段の方へ足を向けた。

すると、又も朦朧と、例の薄赤い燈火の光が、廊下の方から射して来た。

「あッ」

「又も、執念深い!」

今は主税は恐怖よりも、烈しい怒りに駆り立てられ、猛然と廊下へ突き進んだ。

その後からあやめも続いた。

しかし、廊下には燈火はなく、堅く閉ざされてあるはずの雨戸の一枚が、細目に開けられてあるばかりであった。

二人はその隙から戸外を見た。

三階造りの頂上よりも高く、特殊に建てられてある閉扉の館の、高い高い二階から眺められる夜景は、随分美しいものであった。主屋をはじめ諸々の建物や、おおよその庭木は眼の下にあった。土塀なども勿論眼の下にあった。