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かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠
国枝 史郎
「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页
月は澄みきった空に漂い、その光は物象を清く蒼白く、神々しい姿に照らしていた。
庭上の人影
間もなく死ぬ運命の二人ではあったが、この美しい夜の景色には、うっとりとせざるを得なかった。
ふいにあやめが驚喜の声をあげた。
「まア梯子が! ここに梯子が!」
いかさま廊下の欄干ごしに、一筋の梯子が懸かっていて、それが地にまで達していた。
それはあたかも二人の者に対して、この梯子をつたわって逃げ出すがよいと、そう教えてでもいるようであった。
「いかにも梯子が! ……天の与え! ……それにしても何者がこのようなことを!」
主税も驚喜の声で叫んだ。
「不思議といえば不思議千万! ……いやいや不思議といえばこればかりではない! ……閉扉の館の戸が開いたのも、燈火の光が現われて、われわれを二階へみちびいたのも、釘づけにされてある館の雨戸が、このように一枚だけ外されてあるのも、一切ことごとく不思議でござる」
「きっと誰かが……お父様の霊が、……わたしたちの運命をお憐れみ下されて、それで様々の不思議を現わし、救って下さるのでございましょうよ。……さあ主税様、この梯子をつたわり、ともかくも戸外へ! ともかくも戸外へ!」