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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

頼母は林の中へ走り込んだ。

でも林の中には人影はなく、落葉松だの糸杉だの山桜だの、栗の木だの槇の木だのが繁りに繁り、月光を遮ぎり月光を澪し、萱だの芒だのいら草だのの、生い茂り乱れもつれ合っている地面へ、水銀のような光の斑を置き、長年積もり腐敗した落葉が、悪臭を発しているばかりであった。

秘密は解けたり!

そうして林の一方には、周囲五町もある大古沼が、葦だの萱だのに岸を茂らせ、水面に浮藻や落葉を浮かべ、曇った鏡のように月光に光り、楕円形に広がっていた。そうして沼の中央に在る、岩で出来ている小さい島の、岩の頂にある小さい祠が、鳥の形に見えていた。

でも人影はどこにもなかった。失望して頼母は佇んだ。

と、又もや歌声が、行手の方から聞こえてきた。

(さてはむこうか)と頼母は喜び、跫音を忍ばせてそっちへ走った。

茨と灌木と蔓草とで出来た、小丘のような藪があったが、その藪の向こう側から、男女の話し声が聞こえてきた。

(さては?)と頼母は胸をドキつかせ、藪の横から向こう側を覗いた。

一人の娘と一人の老人とが、草に坐りながら話していた。

老人は白髪白髯の、神々しいような人物であったが、しかしそれは一向見知らない人物であった。