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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

……これこれ小猿よ立ってごらん」

言葉に連れて地に倒れていた猿が、毬のように飛び上り、宙で二三度翻筋斗を打ったが、やがて地に坐り手を膝へ置いた。

「ね、ごらん」と老人は云った。

「あの通りじゃ、すっかり癒った。……いや誠心で祈りさえしたら、一本の稲から無数の穂が出て、花を咲かせて実りさえするよ」

その時猿廻しは編笠を脱いで、恭しく辞儀をした。

その猿廻しの顔を見て、主税は思わず、

「あッ」と叫んだ。それは女であるからであった。しかも両国の曲独楽使いの、女太夫のあやめであった。

隠語を解く

曲独楽使いの浪速あやめが、女猿廻しになっている! これは山岸主税にとっては、全く驚異といわざるを得なかった。

しかも同一のその女が、自分へ二つの独楽をくれた。

そうしてその独楽には二つながら、秘密らしいものがからまっている。

(よし)と主税は決心した。

(女猿廻しを引っとらえ、秘密の内容を問いただしてやろう)

そこで、主税は立ち上った。

するとその瞬間に龕燈が消えて、いままで明るかった反動として、四辺がすっかり闇となった。

主税の眼が闇に慣れて、木洩れの月光だけで林の中のようすが、朧気ながらも見えるようになった時には、女猿廻しの姿も、美童の姿も猿の姿も、眼前から消えてなくなっていた。