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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

「淀という文字を目つけてござる」

「淀? ははア、それだけでござるか?」

「いやその他に荏原屋敷という文字も」

「ナニ荏原屋敷? 荏原屋敷? ……ふうん左様か、荏原屋敷――いや、これは忝のうござった」

云い云い浪人は懐中へ手を入れ、古びた帳面を取り出したが、さらに腰の方へ手を廻し、そこから矢立を引き抜いて、何やら帳面へ書き入れた。

睨み合い

「さてお武家」と浪人は言った。

「その独楽を拙者にお譲り下されい」

「なりませぬな、お断りする」

はじめて主税はハッキリと言った。

「貴殿のお話承わらぬ以前なら、お譲りしたかは知れませぬが、承わった現在においては、お譲りすることなりませぬ」

「ははあさては拙者の話によって……」

「さよう、興味を覚えてござる」

「興味ばかりではござるまい」

「さよう、価値をも知ってござる」

「独楽についての価値と興味とをな」

「さようさよう、その通りで」

「そうすると拙者の言動は、藪蛇になったというわけでござるかな」

「お気の毒さまながらその通りで」

「そこで貴殿にお訪ねしますが、この拙者という人間こそ、その独楽を手中に入れようとして、永年尋ねておりました者と、ご推量されたでござりましょうな」