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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

それは可憐で痛々しくて、叱られて泣いている子供のような、あどけなさをさえ感じさせる姿であった。

(あの子が、お八重が、何で盗人であろう!)

そういう姿を眼に入れるや、主税は猛然とそう思った。

(これは何かの間違いなのだ!)

「お八重殿」と嗄れた声で、主税は嘆願でもするように云った。

「真実を……どうぞ、本当のことを……お話し下され、お話し下され! ……盗人などと……嘘でござろうのう」

狂わしい心持で返事を待った。

と、お八重は顔を上げた。

宵闇の中へ夕顔の花が、不意に一輪だけ咲いたように、上げたお八重の顔は蒼白かった。

「山岸様!」と、その顔は云った。

「八重は死にます! ……殺して下さりませ! ……八重は盗人でござります! ……深い事情がありまして……あるお方に頼まれまして……お館の数々のお宝物を、盗んだに相違ござりませぬ。……貴郎様のお手にかかりまして、もし死ねましたら八重は本望! ……悲しいは愛想を尽かされますこと! ……死にたい! 殺して下さりませ!」

花が不意に散ったように、お八重の顔は沈んで袖の上へ消えた。

泣き声が細い糸のように引かれた。

(そうか、やっぱり盗人なのか)