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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

主税は首を膝へ垂れた。

(深い事情があるといった。そうだろう! その事情は?)

泣き声はなおも断続して聞こえた。

(事情によっては許されもするが……)

(あるお方に頼まれたという。何者だろう、頼んだものは?)

「ここを出たい!」と声に出して、主税は思わずそう叫んだ。

縄を千切って、お八重を助け出して、ここを出たい! ここを出たい!

無効と知りながら又主税は、満身に力を籠めて体を揺すった。

しかし、縄は切れようともしない。

時がだんだん経って行く。

廊下に向いて立てられてある襖が、向う側から開いたのは、それから間もなくのことであった。

(来たな、頼母め!)と主税は睨んだ。

しかるに、部屋の中へ入って来たのは、赤いちゃんちゃんこを着た小猿であった。

「猿!」と主税は思わず叫んだ。

途端に、小猿は飛びかかって来た。

「こやつ!」

しかし藤八猿は、主税の体にかかっている縄を、その鋭い歯で食い切り出した。

どこからともなく口笛の音が、猿の所業を鼓舞するかのように、幽かに幽かに聞こえてきた。

第二の独楽の文字

この頃主屋の一室では、覚兵衛や勘兵衛を相手にして、松浦頼母が話していた。