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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

あやめの手が素早く内懐中から抜かれて、高く頭上へ振りかぶられた。瞬間「わーッ」と勘兵衛は叫び、両手で咽喉を掻きむしった。

「これでもか! これでもか! これでもか」

ピンと延びている紐を手繰り、勘兵衛を地上に引き摺り引き摺り、

「くたばれ! 殺す! 今度こそ殺す! ……お父様の敵! 敵の片割れ!」

「山岸氏参るぞ――ッ」と、もう一人の浪人と、主税の横から迫ったのは、飛田林覚兵衛であった。が、覚兵衛はお八重らしい女が、もう一人の女と遥か彼方を、木立をくぐって走って行くのを見るや、

「南部氏……主税は……貴殿へお任せ! ……拙者はお八重を!」と浪人へ叫び、二人の女を追っかけた。

頼母は一旦は走り出たが、部屋へ置いて来た独楽のことが、気にかかってならなかった。

それで屋敷へ取って返し、廊下を小走り部屋へ入った。

「あッ」

頼母は立縮んだ。

赤いちゃんちゃんこを着た一匹の小猿が、淀屋の独楽を両手に持ち、胸の辺りに支えて覗いているではないか。

頼母はクラクラと眼が廻った。

「…………」

無言で背後から躍りかかった。

その頼母の袖の下をくぐり、藤八猿は独楽を握ったまま、素早く廊下へ飛び出した。