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こんにちのせいかつとぶんかのもんだい

今日の生活と文化の問題

宮本 百合子

「生活の思索」教材社、1941(昭和16)年5月発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,545 字 · 19 页

青空文庫

たのだろうか。ダラディエの属していた急進社会党とレイノーの属していた中央共和派とは、フランスの社会生活全般に対してどんな見解の相異をもっていたかということや、ダラディエ一人の中にどんな自家撞着があり、更にどんな利害の対立をもっていたかということについて、モーロアは一言も触れていない。ダラディエとレイノーの対立は、その根底にどんな深刻な現代フランス社会の矛盾をもっていたか、つまりはその矛盾がフランスの支配者たちを自繩自縛におとし入れ一般の人民はその結果に耐えなければならない運命におかれたのだということに、モーロアの史眼は及んでいない。歴史の現実のそういう本質の契機にふれようと努力しないで、モーロアはさも自分が国家の機密に通暁している人物のように、アメリカというよその客間から客間とまわって、時代的ゴシップを喋っているに過ぎない。そのことで、彼自らが要するに、醜聞とともに書いている連中と何も本質の違った存在ではないことを示しているのである。

モーロアの本が日本でもあんなに読まれたということに、今日の日本の文化の感覚が世界的な関心を持たざるを得なくなって来ていることが語られていると思う。