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こんにちのじもく

今日の耳目

宮本 百合子

「現地報告」1941(昭和16)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,228 字 · 11 页

青空文庫

隣同士というものの生活がそこまで、まざまざと現れることへの想像が働かなかったのではなかったろうか。

炭屋は米屋の家のものに対して、何とはなし善良な気の毒さを感じていたかもしれない。位牌を店先に立てておくようで、と思ったかもしれないが、ひとが立ててくれたものを自分の家のものの気持で引こめることも出来にくかったろう。

ああいう立札は一周年が過ぎたら取りこめられてもいいのではないだろうか。

用事があって千駄ケ谷の方へ出かけたら、一つの閑静な通りの二ヵ所に、同じ種類の立札があった。けれども、ここの町内のは小さく三角形の頂きをもったものではなくて、四分板へいきなり名誉戦死者の軍人としての階級も大書して、それを門傍の塀へ、塀いっぱいの高さに釘づけにしてある。火事にあって立ちのき先を四分板へ大書しておく、あの感じで、それは一種騒然たる街上の印象であった。出るにつけ入るにつけ、その四分板の大文字を見て暮す家人の胸中はどうであろう。悲しみを常に新たにされるというばかりでなく、ああいう標は、いろんないかさま師に何か思いつかせるきっかけになるのではないかと、その家に残っている女の人々の日常の感じが思いやられる。