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ぶっぽうそうちょう
仏法僧鳥
斎藤 茂吉
「時事新報」1928(昭和3)年1月4日、5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,351 字 · 11 页
または金堂の中にいて轟く雷鳴を聞きながら、空海四十二歳の座像を見ていたときなどは、寂しい心持になってこの山上を愛著したのである。
併し或堂内で、畳の上にあがって杉戸の絵を見ていると小坊主に咎められた。そこにあたかも西洋人夫婦を案内して来た僧がいて仏壇の内陣の方までも見せている。『あれはどうしたのだ』という。『あれは寄附をしたのです』と答える。『馬鹿いえ。僕らも寄附はして居るんだぞ』と云う。斯かる問答は如何にもまずい表出の運動であった。けれどもこの機縁も仏法僧鳥人工説に一つの支持を与えたのである。
私等はこういうような経験をして高野山をくだった。そして和歌の浦まで来たが、もう海水浴も過ぎた頃なので旨い魚を直ぐ食わせるところも見当らず、逝春に和歌の浦にて追い付きたりという句境にも遠いので、其処に夕がたまでいてO先生と別れ三人は那智の方に行く汽船に乗ったのであった。
それから丸一年が過ぎた。私等は去年やったような歌の修行の集まりをば武州三峰山上で開いた。然るに三峰山頂には仏法僧鳥がしきりに啼いた。もう日が暮れかかると啼く。月明の夜などには三つも四つも競って啼いた。