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ぶっぽうそうちょう
仏法僧鳥
斎藤 茂吉
「時事新報」1928(昭和3)年1月4日、5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,351 字 · 11 页
『山はこれでも可なり深いらしいですがね。どれ、小便でもして来るかな』
『もっと奥の方でなさいよ。ここだって霊場ですから』
『承知しました』
杉と檜と鬱蒼として繁って、真昼でも木下闇を作っているらしいところに行き、柵のところで小用を足した。そのへんにも幾つか祠があり、種々の神仏が祭ってあるらしいが、夜だからよくは分からない。老木の梢には時々木兎と蝙蝠が啼いて、あとはしんとして何の音もしない。
それから小一時間も過ぎてまた小用を足しに来た。小用を足しながら聴くともなく聴くと、向って右手の山奥に当って、実に幽かな物声がする。私は、『はてな』と思った。声は、cha ― cha というように、二声に詰まって聞こえるかと思うと、cha ― cha ― cha と三声のこともある。それが、遙かで幽かであるけれども、聴いているうちにだんだん近寄るようにも思える。それから二ついるようにも思える。私は木曾に一晩宿ったとき、夜ふけて一度この鳥のこえを聴いたことがあるので、その時にはもう仏法僧鳥と極めてしまっていた。
『O先生、いよいよ啼きだしました。T君もM君も来ませんか』