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イタリアのことう

伊太利亜の古陶

宮本 百合子

「中央公論」1924(大正13)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,477 字 · 31 页

青空文庫

丁度みや子が本文を書き終り、ほっとして、長い巻紙の端を手にとりあげた時であった。彼女の背後の襖の外で書生の声がした。

「奥様」

「――あけておはいり」

書生は鳥の子の襖を肩幅だけ開けて、一つの到来品を書状ぐるみさし出した。

「今高畠様からお使いがこれを差上げてくれと申しました」

「へえ……高畠さんて――」

彼女は腑に落ちない面持で封書の裏を見た。高畠正親とある。みや子は理由の分らない不安にせかれて封を切った。処々とばして読んだ文面によると、例の皿は余程お気に適ったと推察する。昨日もまたわざわざ御入来の由を妻から承った。先般来晨子のことでは一方ならぬ御配慮を煩し、何かと心がけていたところ、図らずあの皿がお目に止ったようだ。自分等夫妻の感謝の微意を表すには、この皿を貴下の優秀な蒐集の一部に加えるのが最も適当だと思われる。何卒飾棚の一隅に席を与えてくれるようにというのであった。

みや子は、持っていた筆の軸で無意識に額の隅を掻いた。彼女は俄に気の抜けた風で、

「お使は待っているのかえ?」

と物懶げに訊いた。

「はい」

「ではね、旦那様に失礼でございますが一寸って――

廊下にどかどか跫音を立てて日下部が入って来た。