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イタリアのことう

伊太利亜の古陶

宮本 百合子

「中央公論」1924(大正13)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,477 字 · 31 页

青空文庫

「何だい?」

「今こんなものが参りましたよ。何とか云ってあげなければいけますまい」

「どれ」

彼は気のせく中腰のまま子爵の手紙をとりあげた。読むうちに、彼の顔はぱっと火のように赧くなった。彼は、どっさり片膝をつき、いそいで包を解き、箱を開け、つめものの綿をとりのけた。中には白羽二重の布につつまれ、あれ程心を労させたグーッビョー。彼ばかりが贋と知るジョルジョの円皿が、紅玉釉薬の艶も静に入っているではないか。日下部太郎は皿を手にとり、説明出来ない複雑な表情を浮べた。炬燵布団にぐったり頬をもたせ、眼の端から良人の仕業を見ていたみや子は、深紅色の珍しい皿の耀きに頭を擡げた。彼女は良人に注意した。

「あとで悠くり御覧になれるのだから御返事だけは早くなさい」

彼女は、今の今まで熱心に書いていた高畠夫人宛の手紙をすーっと鋏で剪りとった。そして筆をしめし良人に持たせた。

日下部太郎は、非常に高畠子爵に気の毒を感じた。子爵が贋などとはまるで思わず珍蔵していたこの品を、自分にくれようと思いきるには余程の決心がいったろう。彼にそんな決心をさせた原因は、世間に有り触れた媒酌という一つの行為にすぎない。