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イタリアのことう
伊太利亜の古陶
宮本 百合子
「中央公論」1924(大正13)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,477 字 · 31 页
二
「いや君、それはいけない」
子爵が真面目くさって日下部を遮った。
「我々は細君方より少くも五つや六つは年上だ。年長者の特権というものは、煖炉の近くで最もいい場所を占めるにある。どれ――では失礼」
子爵は、皆を笑わせながら、どっかり安楽椅子に納まった。珈琲とキュラソオとが運ばれた。日下部太郎は、婦人達に向って二言三言毒のない冗談を云い、子爵と愉快そうに酒の品評を始めた。
二
此方では、子爵夫人とみや子とが並んで長椅子にかけていた。
端正な、然し一度もぱっと咲き揃った花盛りという時代はないなり凋んだような顔をみや子に向け、子爵夫人は感歎した。
「いつおめにかかりましても日下部さんはお気が若くて何よりでございますことねえ」
「騒々しいばかりで恐れ入ります」
みや子は、小ぢんまりした夫人の横でなお堂々と感じられる盛装の体をちぢめるようにしながら謙遜した。
「いつもいつもさぞおやかましゅうございましょう」
「何の、お賑やかで何よりでございます。私共ももう直ぐお祖父さま、お祖母さまでございますが、お宅では?」
「私共では男ばかりで先が遠いことでございます。上のがやっとこの春大学へ入る筈でございますがいかがなりますか……」