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さど
佐渡
「公論」1941(昭和16)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,270 字 · 23 页
また、まちを歩いた。やたらに土産物を買った。少しも気持が、はずまない。
これでよいのかも知れぬ。私は、とうとう佐渡を見てしまったのだ。私は翌朝、五時に起きて電燈の下で朝めしを食べた。六時のバスに乗らなければならぬ。お膳には、料理が四、五品も附いていた。私は味噌汁と、おしんこだけで、ごはんを食べた。他の料理には、一さい箸をつけなかった。
「それは茶わんむしですよ。食べて行きなさい。」現実主義の女中さんは、母のような口調で言った。
「そうか。」私は茶わんむしの蓋をとった。
外は、まだ薄暗かった。私は宿屋の前に立ってバスを待った。ぞろぞろと黒い毛布を着た老若男女の列が通る。すべて無言で、せっせと私の眼前を歩いて行く。
「鉱山の人たちだね。」私は傍に立っている女中さんに小声で言った。
女中さんは黙って首肯いた。
(作者後記。旅館、料亭の名前は、すべて変名を用いた。)