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よれいはつたび

余齢初旅

上村 松園

――中支遊記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,003 字 · 32 页

青空文庫

日本の家のように陽あたりがいいというような室がない、だから住民はわざわざ食物を表へ持ち出してたべているらしい。

支那は石が豊富なのであろうか、どこへ行ってみても街は石だたみになっている。人力車にのると石だたみの上を走るからゆれ通しで苦しい。それに梶棒がやたらに長い。この車にのって行くと、仰向いて車の上で飛びあがってまるで大波にでもゆられて行くような感じであった。

ごみごみとした通りをすぎると、ちょっとした富豪の家があって、中へはいると庭には太湖石が置いてあって、樹木がつくってある。それを出ると青天井の便所があったりする。散髪も戸外でやっている。それを私がスケッチしはじめると、物見高い子供や大人がよって来る。どこも同じ野次馬風景である。散髪屋も客を放りぱなしでスケッチを見にやって来るのである。客はそれでも文句ひとついうでもなく、だまって散髪屋が帰って来て再びとりかかるまでじっと待っている。

人が沢山たかって来ると何という異臭の強いことであろうか……。

女の人が店番をしていて御飯をたべている。大きなおはちの中には黄色いごはんが入っていて、おかずもなしにこちこちたべている。