轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
びんじょうのずえ
便乗の図絵
宮本 百合子
「光」1948(昭和23)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,614 字 · 19 页
便乗ということばが、わたしたちの日常にあらわれたのはいつごろからのことだったろうか。
日本の天皇制権力が満州・中国と侵略をすすめて、世間の輿論も、議会の討論も邪魔と考えはじめてから、日本全国には政治がなくなって強権の専断ばかりになった。その時分、翼賛会ができた。議会は政府案に決して反対しないという条件の翼賛議会になり、侵略戦争賛成、種々の人権抑圧法賛成、いくらでも軍事費をつかうこと賛成と、侵略戦争のためのロボット議員が推薦候補で議員になった。便乗という卑屈なくせに利慾のまなこは八方にくばっている言葉が生れたのはその頃のことであった。
ちょうど便乗という言葉がはやりはじめた時分、これまで東京の街々にあふれていたやすいタクシーもだんだん姿を消しはじめた。どこかで落ち合った知人が自動車をもっていたりすると、君、どこか都合がいいところまでのって行ったらと自動車をもっている人は友人にそうすすめたし、すすめられた友人は、じゃ、便乗させて貰うか、とのって行った。
こんな場合につかわれた便乗は、そのころはやり出した便乗ということばの、最も正統な、また最も素朴な使いかたであった。