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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

人

法勝寺執行俊寛

丹波少将成経

平判官康頼

有王(俊寛の昔の家僮)

漁夫(男、女、童子ら数人)

丹左衛門尉基康(清盛の使者)

その従者 数人

船頭 数人

時

平氏全盛時代

所

鬼界が島

第一幕

鬼界が島の海岸。荒涼とした砂浜。ところどころに芦荻など乏しく生ゆ。向こうは渺茫たる薩摩潟。左手はるかに峡湾をへだてて空際に硫黄が嶽そびゆ。頂より煙をふく。ところどころの巌角に波砕け散る。秋。成経浜辺に立って海のかなたを見ている。康頼岩の上に腰をおろして木片にて卒都婆をつくっている。

成経 あゝとうとう見えなくなってしまった。九州のほうへ行く船なのだろう。それとも都へのぼる船かもしれない。わしの故郷のほうへ。

康頼 どうせこのような離れ島に寄って行く船はありませんよ。そんなに毎日浜辺に立って、遠くを通る船を見ていたってしかたがないではありませんか。

成経 でも船の姿だけでもどんなになつかしいか。灰色にとりとめもなく広がる大きな海を見ているとわしは気が遠くなってしまう。わしとは何の関係もないように、まるで無意味で、とりつくしまもないような気がする。せめて向こうに髪の毛ほどでもいいから、陸地の影が見えてくれたら。