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しゅんかん
俊寛
倉田 百三
「新小説」1919(大正8)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页
俊寛 いや。わしはわしの唯一の希望をこわしました。
成経 (俊寛の肩をたたく)われわれは今絶望する時ではありません。われわれは最後の瞬間まで勇士としての覚悟を失いますまい。勇士の子孫としての誇りを。あなたはあまりに衰えました、わしたちがいかにあなたに信頼しているかを思ってください。
俊寛 わしはもうその誇りを失いそうです。
成経 蘇武は胡国との戦争に負けて、異域の無人の山に飢えた獣のようになって、十五年間もさまよい暮らしました。しかしその困苦に耐えきってついに漢王の都に帰ることができたではありませんか。
俊寛 あゝ、都よ、都よ、私はその都という言葉を聞いただけでも恋しさにふるえるようだ。
成経 帰れますよ、きっとも一度その都の地を踏む時が来ます。
俊寛 もし清盛がも一度都へかえしてくれたら、わしは清盛がわしに加えた罪悪をも許してやり、清盛の武運を祈ってでもやろうものを。
成経 おゝ、わしはわしの耳を信ずることができない、あなたの口からそんな言葉の出るのを聞くとは思わなかった。
康頼 俊寛殿はもはや何も反省することはできないのです。夢中で言っているのです。故郷を慕うほかには何も考えられないのです。