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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

そしてその欲望を自分の欲望だと思ってしまう。あゝわしはこの間恐ろしい夢を見た。いや、夢ではない。まぼろしだ。わしは白昼に見たのだから。それは無数の霊の空中に格闘する恐ろしい光景であった。わしは武器の鏗鏘として鳴る音を空中に聞いた。そのあるものは為義のようであった。そのあるものは信西のようであった。彼らは叫び、呪い、刃をもって互いに傷つけた。その争闘ははてしないように見えた。ついに幻影の群勢は格闘しながら海の中へ没した。そしてわしは地に倒れた。

康頼 あなたは頭が変になりかけているのだ。夜も眠らずにあまり思いつめるから。心を静めるようにしなくてはあなたが狂気することをわしは恐れる。

俊寛 わしはむしろ気ちがいになりたい。そしてこの昼夜間断のない苛責から免れたい。

成経 あなたはわしの誇りをも、康頼殿の信仰をもこわしてしまおうとするのだ。そして自分の心をもかき乱してしまおうとするのだ。

俊寛 あゝ、わしはだめだ。わしは自分を支えることができない。支えるものが一つもない。わしの魂が亡んでゆくのをはっきりした意識で見ているのは堪えられない。

成経 わしはあなたを見ているのは堪えられない苦痛になりだした。