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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

潮風に吹き流されて。この島の磯にでも打ちあげれば、蜑の子が拾うて薪にでもしてしまうだろう。

康頼 しかしあれには二首の歌が彫りつけてあります。故郷をしたう歌が。心あるものはまさか焚いてしまいはしますまい。

成経 文字など読めるような人がこの島にいるものですか。言葉でもろくに通じないくらいだのに、男は烏帽子もかぶらず女は髪もさげず、はだしで山川を歩くさまはまるで獣のようではありませんか。

康頼 あゝ。わしはあの優雅な都の言葉がも一度聞きたい。あの殿上人の礼容ただしい衣冠と、そして美しい上の品のよい装いがも一度見たい。

成経 この島の女は猿のように醜い。

康頼 わしはけさ卒都婆を流しにいって、岸辺に立ってさびしいことを考えました。わしはわし自身が丹精してほりつけた歌を今さらのように読み返しました。何たるさびしい歌だろう。卒都婆は波にもまれて芦のしげみにかくれてしまいました。わしはそれをじっと見送っていたら涙がこぼれた。しかし神様には何でもできないことはないはずだ。千本の内一本でも中国あたりの浜にでも着いて心ある人に拾われたら、きっと清盛の所へ送ってくれるだろう。