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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

あゝ、あなたは泣いていますね。どうしたと言うのだろう。

俊寛 (康頼の足もとに崩れて泣く)

成経 あなたはあまりに衰えました。風雨が樹木を打つように、長い間の不幸があなたを打ったのだ。あなたはあわれな老人のごとく、幸福なときにも泣くことしかできないのだ。あなたの姿はあまりにも痛ましい。わしは思いださずにはいられない。われわれが昔あの鹿が谷のあなたの山荘に密会したころのことを。あのころのあなたのあの鉄のような意志と、鷲のような覇気とを。われわれは皆あなたにいちばん信頼していた。

康頼 われわれの意気はすでに平氏をものんでいた。われわれは恐ろしい陰謀をたくらみながらも、軽い諧謔をたのしみ得るほどに余裕があった。わしは忘れることができない。あの法皇をひそかに山荘に迎えた夜、清盛をたおす細密な計略を定めたあとで、さながらわれわれの勝利の前祝いのように、期せずして生じたあの諧謔を!

成経 あの機知にみちた、天来の猿楽を!

康頼 成経殿がふと狩衣の袖に引っかけて、法皇の前にあった瓶子を倒したのが初めだった。

成経 平氏が倒れた! とあなたが叫んだ時には、私はその思いつきに笑わずにはいられなかった。