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ぞくしゅう
俗臭
織田 作之助
「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页
概ね打明け話は恋愛の陰影を濃くするという例に二人の場合ももれなかったのだ。二人は結婚した。
政江とその夫権右衛門の許可を得ることは仲々むつかしかった。危く結婚し損うところであった。伝三郎が「好いた同志やないか」と助け船を出した揚句、結局このまえ無理に離婚させたことの償いとして許された。割に盛大な婚礼が行われたが、その夜、千恵造は何故かむしろ浮かぬ顔をしていた。宝塚旧温泉できいた女の打ち明話に今更悩んでいたのであろうか。
がともあれ、婚礼の夜の春美こと児子賀来子の著しく化粧栄えのした容貌は、人々を瞠目させ、千恵造は羨望された。伝三郎の言を借りると、千恵造は、「後々へ別嬪な女子をもらって、勝負した(うまくやったという意)」のだ。が、「勝負した」実感が起って来るためには、彼は少くとも俺は勝負したのだと自分にいいきかす必要があった。婚礼の費用はざっと千五百円掛った。
児子家の権式を見せるために少くとも八百円余分の金が費されたのだ。が、そんなに金を掛ける必要は更々になかったと、あとになって人々就中政江は思った。
婚礼の夜から一月ほど経ったある日、政江は新家庭を訪問した。