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ぞくしゅう

俗臭

織田 作之助

「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页

青空文庫

何が良えちゅうたかてのし。兄弟が仲良うお酒のんでお正月出来るちゅうのが一番良えのし」

市治郎の妻が一つ/\のしに力をいれていった。初乃もほゞ同様の事をいった。男たちもそれ/″\短い言葉でそれに賛意を表し、酒をのんだ。政江の順番だ。

「之で、朝鮮にいる千恵さんさえ居てくれたら皆揃うた言うことになりまんのにナ」

権右衛門の盃に酒をつぎ、こぼれたのを拭布でふきながら、さり気なく言った。

「それを言いなはんな」

反響の無い筈はないのだ。政江は花道より本舞台にさし掛ったという可きだ。

「いゝえ。言わしてもらいまっせ。私は何も義理の弟さんの悪口いいたいことはソラおまへん。おまへんけどでんな。現在血を分けた姪の……」あとは聞く迄もないことである。現在血を分けた姪の結婚の邪魔を千恵造がしている。尤もだ。が、聞いていて権右衛門は何かぐいと疳にさわって来た。――正月早々持ち出す可き話ではない。一体に、この前の縁談はとも角、今度の伯爵家との縁談は気にそぐわぬ。釣り合わぬというのでない。伯爵が何であろう。千恵造のこと位で破談にする様な権式など、ありがたくも怖くもないし、性にも合わぬ。