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ぞくしゅう

俗臭

織田 作之助

「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页

青空文庫

大阪に戻ると、早速紙屑屋をはじめた。

所持金三十円の内、六円家賃、敷金三ツの平屋を日本橋五丁目に借りた。請印は、伝三郎が働いている寿司屋の主人に頼んだ。日本橋五丁目の附近には、五会という古物露天商人の集団があり、何かにつけて便利だった。新米の間は、古新聞、ボロ布の類を専門にしていたので、ぼろい儲けもなかったが、その代り、損もなかった。馴れて来るとつい掘出物をとの慾も出て、そんな時は五会の連中に嗤われた。はじめてから三月程経ち、切れた電球千個を一個一銭の十円で電灯会社から買取り、五会の古電球屋に持って行くと、児子はん、あんたは商い下手や。廃球は一個二厘が相場やというのである。古川という電球屋はしかし、暫く廃球を調べてから、おまはんの事やから、まあ一銭で買うたげる、といってくれた。二厘の相場のものを一銭とはと不審に思い、その後、用事のある無しにつけて、古川の店に出入りしている内に、分った。廃球の中に、「ヒッツキ」というのがある。線が全然切れてしまわず、片一方外れているだけで、加減すると、巧く、外れた場所にヒッツクのである。灯をいれると熱で密着し、少くとも四五日は保つ。