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ぞくしゅう

俗臭

織田 作之助

「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页

青空文庫

それを新品として安く売るのだ。「白金つき」というのがある。電球の中には少量だが白金を使用しているのがある。つぶして、ガラスと口金の真鍮をとったあと、白金を分離するのだ。白金は一匁二十六円で、一万個から多くて二匁八分見当とれる。「市電もの」というのがある。市電のマークのある廃球のことで、需要家は多く市電から電球を借りているのだが、切れゝば無料で引き換えてくれるけれど、割れゝば一個五十銭弁償しなければならぬ。その時に、たとえば古川の店で「市電もの」の切れたのを一個十銭で買って、それを電灯会社で新品と引換えてもらうとすれば、差引き四十銭得をすることになる。買うたといわんといとくれやすやという言を守ればいゝ訳である。「ヒッツキ」「白金もの」「市電もの」の多くまじっている廃球ならば、だから一個一銭の割でも結構儲る訳だ。――

と、知って、翌日から、廃球専門の屑屋となった。大八車を挽いて、「廃球たまってまへんか」と電灯会社や工場を廻った。一個三厘で買い「ヒッツキ」と「市電もの」は古川に一個五銭で売り、「白金もの」は自宅で分解することにした。分解の方法を古川が容易に教えぬので、一夜芝居裏の遊廓で転び芸者を抱かせてやる必要があった。