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ぞくしゅう
俗臭
織田 作之助
「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页
夫と義弟達の間に立って随分泣く想いをしたというのである。所詮男は我儘故、女の苦心が分らぬ、蔭で泣いたことがどれ位あるかというのだ。少くとも、彼女はそう思っていた。だから、六百円から十万円作るまでの苦心の中、彼女が強調するのは常にこの一事だ。が、それだけで、如何にしても十万円は無理である。故に、彼女も無論、権右衛門の腕は認めている。「見切りが肝腎」の鮮かさはこゝでも問題になる。
何時の間にか、彼は廃球屋を止めていた。「ヒッツキ」や「市電もの」は危険だし、「白金もの」もそろ/\白金使用分量が少くなるだろうと逸早くにらんだからだ。案の条、間もなく、電球には白金に代るべき金属が使用されることになった。先見の明ともいう可きだ。もう一つの先見の明は、欧洲大戦が起って、銅、鉄、真鍮などの金属類の相場が鰻上りするのを予想して、廃球買いのため出入していた電灯会社に頼んで古銅鉄線、不用レールや不用発電所機械類などを払下げてもらったことだ。最初会社側では相場が分らぬまゝに、二束三文で売り渡した。相場が分り出して来ると、用度課長に賄賂を使った。同業見積者が増えて来れば「談合」