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しゅぜんじものがたり

修禅寺物語

岡本 綺堂

「文芸倶楽部」1911(明治44)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,737 字 · 26 页

青空文庫

桂もつづいて起つ。楓は姉の袂をひかえて、心もとなげに囁く。)

かえで 姉さま。おまえは御奉公に……。

かつら おまえは先ほど、夢のような望みと笑うたが、夢のような望みが今かのうた。

(かつらは誇りがに見かえりて、庭に降り立つ。)

僧 やれ、やれ、これで愚僧もまず安堵いたした。夜叉王どの、あすまた逢いましょうぞ。

(頼家は行きかかりて物につまずく。桂は走り寄りてその手を取る。)

頼家 おお、いつの間にか暗うなった。

(僧はすすみ出でて、桂に燈籠を渡す。桂は仮面の箱を僧にわたし、われは片手に燈籠を持ち、片手に頼家をひきて出づ。夜叉王はじっと思案の体なり。)

かえで 父さま、お見送りを……。

(夜叉王は初めて心づきたるごとく、娘とともに門口に送り出づ。)

五郎 そちへの御褒美は、あらためて沙汰するぞ。

(頼家らは相前後して出でゆく。夜叉王は起ち上りて、しばらく黙然としていたりしが、やがてつかつかと縁にあがり、細工場より槌を持ち来たりて、壁にかけたるいろいろの仮面を取り下し、あわや打ち砕かんとす。楓はおどろきて取り縋る。)

かえで ああ、これ、なんとなさる。おまえは物に狂われたか。