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はいくはかくかいしかくあじわう

俳句はかく解しかく味う

高浜 虚子

「俳句は斯く解し斯く味ふ」新潮社、1918(大正7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,016 字 · 144 页

青空文庫

その「鳴くや」とか「鳴き過ぐや」とかいうような動詞の省略されるという事は俳句には普通の文法である。郭公は耳に聞いた声、大竹原を漏る月夜は眼に見た景色、両者相俟って大景を描き出しているのである。

はら/\と稲妻かゝる芭蕉かな    樗堂

芭蕉は人も知っているように、人間でいえば僧などを聯想するような飾りっ気のない青一色の、大きな葉をしておる、しかも長大な植物である。その芭蕉の広葉に稲妻のする秋の夜の景色を言ったのである。芭蕉の葉の上に稲妻が落ちると言ったばかりでは、唯事柄の筋道を言っただけであるが、それに「はら/\と」という形容を加えたために一篇の詩となっているのである。即ちあの芭蕉の広葉に稲妻のぱっとかかった時の心持をはらはらと言ったのである。どうも稲妻のするような晩であるから空は曇っておる。今まではその芭蕉も唯黒い団りにのみ見えていたのが、その闇を破ってぱっと稲妻が光ると、唯黒い団りと見えていた芭蕉は、そうではなくって、長い葉を何枚となく大空に突出していて、それははたはたと風に揺れておる。稲妻のかかると同時にその青い色も長大な形も葉揺れも見える。